「最低賃金が上がると時給も上がるのか?」と多くの人が疑問と期待をいだいています。
実際には最低賃金が上がったにも関わらず、時給が変わらないという人も多いでしょう。
この記事では、なぜそうなるのかという理由と、それにどう対処すべきかについて解説します。
最低賃金が上がると時給も上がるのか?
最低賃金とは、労働者が受け取るべき最低限の賃金を法律で保障するものです。この金額が上昇すると、最低賃金を下回る賃金を支払っている企業は、法的にその額を上げる義務が生じます。
しかし、最低賃金が上がったからといって、すでにそれ以上の賃金を受け取っている労働者の賃金が自動的に上がるわけではありません。
たとえば、最低賃金が1時間当たり900円から1,000円に上がったとしましょう。あなたの時給がすでに1,100円の場合、この最低賃金の変更はあなたの時給に影響しません。
企業には最低賃金以上の賃金を支払う法的義務がありますが、それ以上の賃金を上げる義務はないのです。
そのため短期的には最低賃金以上の人の時給がすぐに上がるわけではありません。ただし、最低賃金があがるとそれに応じて全体的に時給をあげる企業もあり、長い目で見るといずれ時給は上がっていく可能性はあります。
時給が最低賃金未満……賃金を上げる義務あり
時給が最低賃金以上……賃金を上げる義務なし
最低賃金上がったのに時給は上がらない理由
時給が最低賃金以上だから
最低賃金は使用者が労働者に支払う最低限の賃金を定めたものです。
そのため、すでに最低賃金を上回っている場合、企業側は必ずしも賃金を上げる必要はありません。
最低賃金上昇によるコスト増
最低賃金が上がれば時給もあがりそうですが重要な要素が一つあります。それは企業の経済状況です。最低賃金が上昇した場合、企業の労働コストが増加します。
企業の売り上げや利益がそれに応じて上昇しない場合、既存の従業員の賃金を上げる余裕は生まれないでしょう。企業の経済状況が厳しい場合、企業は最低賃金上昇に対応するために資金を捻出する必要があります。
そのため、企業は労働コストを抑えるために、パートタイムの労働者を増やす、時間外労働を抑制する、あるいは労働の自動化を検討するなどの対策を取るかもしれません。
特に経済が不安定な時期には、企業は生存と競争力を維持するためにコスト削減を優先する傾向があります。
需要と供給のバランス
労働市場の需給状況も時給に影響を及ぼします。
労働力の供給が需要を上回っている場合、企業はより低い賃金で労働力を確保できるかもしれません。これは特に、特別なスキルや経験が必要ない仕事でよく見られます。
一方で、供給よりも需要が多い場合は他社への流出をさけるため、既存の最低賃金以上の社員の時給を上げる可能性もあります。
時給を上げるためにできること
もし自分の賃金が適正でないと感じるなら、まずは自分のスキルや経験、仕事の量と質などを考慮に入れて、自分の価値を正確に評価することが大切です。
次に、雇用者と対話を試みることをお勧めします。直接的なコミュニケーションは問題解決の最初のステップであり、雇用者も適切な賃金を支払うための情報を得ることができます。
しかし、雇用者との対話が解決につながらない場合、あるいはあなたが不適切な賃金待遇を受けていると疑われる場合は、転職を考えることも現実的な選択肢の一つとなります。あなたのスキルや経験をより評価してくれる別の雇用者が見つかるかもしれません。
結論
最低賃金の上昇は必ずしもすべての労働者の賃金上昇につながるわけではありません。
自分の賃金が適正であるかどうかを確認し、必要ならば雇用者への相談や転職等の対策を講じることを検討してみてください。
参考資料
厚生労働省 最低賃金
厚生労働省による最低賃金制度に関するページです。
最低賃金に関する調査報告
厚生労働省の「最低賃金に関する調査研究等事業」において、日本の最低賃金が賃金や雇用等に与える影響について分析・検証した報告書です。