ニュースなどで心肺停止という言葉を聞くことがあると思います。これは文字通り心拍と呼吸が止まってしまう状態を指します。
実はこの状態に陥った時点で、我々は”ほぼ死亡”状態にあると言えます。さらに、この状態になった後の3分が生死の分かれ目とされています。
本記事では次のような内容について説明します。
- 心肺停止後のタイムリミットについて
- 心肺停止後の助かる確率はどのくらいなのか
タイムリミットは3分間!心肺停止後の経過時間と助かる確率
なぜ3分間が重要なのかという理由と、救急車到着の実態を見ていきましょう。
なぜ3分間が重要なのか
心臓が止まると、酸素を運ぶ血流が止まります。
これにより、脳への酸素供給が途絶え、脳細胞は急速に死んでいきます。このプロセスはあっという間に進行します。
心停止から約3分で脳に重大な損傷が生じ、それ以上時間が経過すれば回復の可能性は急速に減少します。これが”発生後3分が生死の分かれ目”と言われる所以です。
下記のグラフは心肺停止後の経過時間と救命率です。3分以内に応急手当てを開始した場合、50%の可能性で生還できることが分かります。
救急車が来るまでの時間
令和3年版 救急・救助の現況によると、救急車が到着するまでの時間は全国平均で8.9分でした。
救急車が来るまで何もしないでいると、救命率は10%以下となります。
現場に居合わせた人が3分以内に応急手当てをできるかどうかが、非常に重要となります。
「心肺停止=ほぼ死亡」助かる確率は約10%
心肺停止後に助かる確率について説明します。
助かる確率は10%程度
令和3年版 救急・救助の現況によると、救急隊が搬送した心肺機能停止傷病者数のうち、救急隊が到着するまでに一般市民により応急手当が実施されている場合の1ヵ月後の生存率は15.2%で、応急手当が実施されていない場合の割合 8.2%となっています。
一度心肺停止になると、助かる確率は10%程度。10人いたら1人だけが生きられる計算となります。
心肺停止後の助かる確率(米国との比較)
米国でも日本と同様助かる確率は10%程度となっており、ほぼ死亡となります。
日本 | 米国 | |
---|---|---|
心肺停止後の助かる確率 | 約10% (令和3年版 救急・救助の現況) | 約10% (アメリカ疾病予防管理センターCDC) |
AED使用率 | 4.1%(2021年) | 10.2%(2021年) |
心肺停止後3分以内にやるべき対応
心肺蘇生は心肺停止からの回復を試みるものです。適切に実施されると、生存率と脳機能の維持に重要な役割を果たします。
心肺停止が発生した場合、直ちに取るべき行動がいくつかあります。以下にそれらを簡単に説明します:
- 確認:周りが安全か、そしてその人が意識がなく、呼吸もしていないか確認します。
- 呼び出し:すぐに救急サービスに連絡します。日本では「119」に電話します。
- 心配蘇生開始:胸骨圧迫を始めます。手を胸の中央に置き、速さは「1秒間に2回」のリズムで強く押し続けます。
- AED使用:近くにAED(自動体外式除細動器)があれば、その指示に従って使用します。
- 続ける:救急隊が到着するまで、心配蘇生を続けます。
しかし、実際には、心肺停止が起きてから心配蘇生が開始されるまでの時間が3分以上となり、この間に既に脳に大きなダメージが生じるケースが多いです。いかに早く心配蘇生に着手できるかが生還の鍵になります。
心肺停止と死亡の違い
心肺停止は、心臓が動かなくなり、呼吸が止まった状態です。心臓が動かなくなると、脳やその他の臓器に十分な血液が送られなくなり、死に至る可能性があります。
心肺停止状態であれば、早期に適切な蘇生処置を行うことで、死亡を回避できる可能性があります。
死亡は、心肺停止状態が続いた結果、脳の機能が完全に停止した状態です。死亡状態になると、意識や呼吸、心拍などの生命活動はすべて停止します。
「心肺停止=ほぼ死亡」についてのまとめ
日本の統計データ(心肺停止後助かる確率は10%)をもとに考えると「心肺停止=ほぼ死亡」と言わざるをえません。
しかし、心肺停止後のタイムリミットである3分以内に救命手当を開始できれば生還できる可能性が50%以上へと大幅に高まります。
救命手当の開始は早ければ早いほど有効ですので、正しい知識と勇気を持って迅速に行動できるようにしたいものです(政府広報オンラインでも応急手当ての方法が公開されています)。